犬の去勢について

去勢

去勢にはいくらかの利点があります。重要なもののひとつに前立腺があげられ、前立腺はテストステロンの影響を受け、生涯を通して徐々に大きくなる為、高齢時に巨大化し排泄機能に影響する可能性があります。テストステロン影響下の前立腺は感染を起こしやすく、去勢しなければ解決はほとんど不可能です。去勢は、前立腺を縮小させ、前立腺炎や加齢に伴う前立腺肥大の悪影響を予防する効果があります。
前立腺がんを予防するとよく勘違いされますが、それは間違いです。その他の利点は、ある種のヘルニア、精巣、肛門の腫瘍を予防したり、過剰な包皮の流出物も去勢により減少します。
テストステロン(Testosterone)は、男性ホルモン(アンドロゲン)の一種です。天然に存在する物質の中では、最も生理活性の強力な男性ホルモンと言われています。

●去勢後予想される行動変化は?●
去勢後認められる唯一の行動変化は、男性ホルモンに影響される行動です。人に対してよくじゃれる、愛想、社会化などは変化しないです。しかし、望まれない行動はかなり変化します。徘徊は去勢した犬の90%に見られなくなり、他の雄犬に対する攻撃性は60%、マーキングは50%、マウンティングは70%の去勢犬で消失します。

●外科手術はどのようにするの?●
陰嚢の直前を一般的に切開します。その切開創から精巣を取り出します。精巣茎を結紮し切断します。去勢はこれで終了です。精巣が除去されなければ、前述の利点は得られません。皮膚切開創は縫合するか、そのままの場合もあります。

●退院してから予想される事は?●
手術後2,3日によく陰嚢が腫れ、実際に処置は行われたのか疑問を抱くオーナーさんがいます。もし去勢時に犬が若かったら、成長に伴い空の陰嚢は平らになっていきます。去勢時に成犬だったら、皮膚の垂下物のように陰嚢が残ります。時々切開創が軽度の傷になりますが、過度の痛みを示さなければ、鎮痛処置は常に必要とされません。ほとんどの犬は、手術したその日でも遊びに熱中しますが、切開部に触らせないようにして、激しい動きは止めておくべきです。

●費用はどのくらいかかるの?●
オスの去勢手術15,000円~20,000円位

●いつ頃去勢を行うの?●
去勢は8週齢以上で実施可能です。春期発動前(一般に6ヶ月)に去勢した犬は、その後去勢した犬よりも少し大きくなる傾向があります(テストステロンは骨の成長を止め、テストステロンがない時には骨の成長が遅れて止まる為)。前立腺が大きいときには、縮小させる一番よい方法として老齢犬でも去勢を行うべきです。この時、麻酔を行うため、麻酔前に血液検査や他の診断検査が勧められます。以前は去勢を行う年齢は6ヶ月前後がいいとされていて、多くの獣医師はいまだこの年齢を推奨しています。以前から言われている去勢による利点(健康と行動)は、去勢実施年齢に関わりはないです。

●肥満や無気力になるの?●
活動レベルや食欲は去勢で変化はしません。しかし、去勢手術後体重が増えないようにするべきなので、遊びを減らすべきでもないです。

●まだ雌犬に興味を持つの?●
興味は少なくなりますが、発情した雌犬の周りにいれば、刺激を受けます。 マウンティングは根本に優勢表現であることが多いので、性的動機がないようなさまざまな場合で行うこともあります。

●停留睾丸のときは?●
停留睾丸は、正常な睾丸以上に腫瘍化する傾向があります。そして精巣茎が捩れ、命に関わる炎症を起こす事もあります。それらの理由で、停留睾丸の犬の去勢は推奨されます。この処置は、通常の去勢より複雑で、陰嚢に下ってくるはずの皮膚の下に睾丸があるか、腹腔の中にあるかもしれない。睾丸発見に探査しなければいけない事もあるので、また各睾丸に対し切開が必要となります。停留睾丸は生殖能力がなく発達が悪いです。1つ正常に下降した睾丸があれば、繁殖可能ですが、停留睾丸は遺伝特性があるので、繁殖に供さない事が重要となります。

停留睾丸・陰睾
睾丸は生後1ヶ月ぐらいまでにお腹の中から陰のうに降りてくるのが正常ですが、稀に降りない仔がいます。これを陰睾、停留睾丸と呼びます。この睾丸は精子を作ることができませんが男性ホルモンは作ることができますので雄の繁殖行動は行います。